宮崎県高千穂町の人口減少は、全国平均と比べてどのくらい速いのか。
この記事では、国勢調査のデータをもとに、日之影町や五ヶ瀬町などの周辺市町村、さらに人口規模が近い長野県山ノ内町や新潟県田上町とも比較しながら考察しました。観光地でありながら定住者が減る背景には何があるのか。数字だけで見えない現実も掘り下げます。
高千穂町の人口は本当に減っているのか?
全国や周辺の町と比較して見えてきたこと
高千穂町の人口減少が気になっている。
なぜなら、高千穂峡や高千穂神社には今でも観光客がたくさん来るし、町としての存在感はある。
だけど、ふとした瞬間に、町全体がとても静かに感じるときがある。観光と暮らしの人口は、別の動き方をしているのではないか。そんな疑問が、今回の出発点だ。
比較のポイントは3つ。
・全国と比べて高千穂町の人口はどうか
・周辺の市町村と比べたときに、目立って減っているのか
・人口が近い県外の町(山ノ内町・田上町)と似た傾向か、違う流れなのか
今回はその3点を軸に、数字と感覚の両方で整理してみた。
比較の前提を揃えるために
国勢調査の2015年と2020年を使って5年で見る
まずは基準を揃えないと比較ができない。
今回は国勢調査の2015年と2020年の人口を使い、5年間の増減率で判断していく。
数字は冷たい。でも、基準としては信用できる。だからここでは、あえて数字を丁寧に見ていく。
全国平均と高千穂町の人口減少率を比べる
全国よりもはっきり速いペースで減っている
全国の人口は、2015年が1億2,709万人。2020年は1億2,614万人。
この5年間で、全体では約0.7%の減少。ゆるやかな落ち方といえる。
それに対して、高千穂町はというと
2015年:12,755人
2020年:11,642人
およそ8.7%の減少になる。
一目でわかる。全国の減少率とは桁が違う。
ただし、ここで「高千穂だけが特別」と言ってしまうのは早すぎる。
平均というのは、増えている都市部も混ざった数値だからだ。山間の町にそのまま当てはめると、ズレが出てしまう。
次は、周辺の町と並べてみる。
周辺の町はどうか?
西臼杵郡と延岡エリアと並べて考えてみる
まずは同じ西臼杵郡にある2町村。
・日之影町
2015年:3,946人
→ 2020年:3,635人(約7.9%減)
・五ヶ瀬町
2015年:3,887人
→ 2020年:3,472人(約10.7%減)
この2つを並べてみると、高千穂町の減少率(8.7%)は真ん中あたり。
つまり、西臼杵郡全体で見れば、似たスピードで人口が減っているということになる。
次に、高千穂町と生活圏がつながっている延岡方面。
・延岡市:5.4%減
・日向市:3.5%減
・門川町:4.4%減
これらの市町は減少率が小さめ。人口規模が大きく、雇用や教育の選択肢も多い。
高千穂町は国道218号で延岡とつながっているが、それでも距離や山道の負担が違う。
アクセスがある=人口が保たれる、という単純な話ではないようだ。
規模が近い他県の町と比べてみる
山ノ内町と田上町は高千穂とどう違うか
ここからは、全国の中から人口が近い町を選んで比べてみる。
・長野県山ノ内町
2015年:12,429人
→ 2020年:11,352人(約8.7%減)
・新潟県田上町
2015年:12,188人
→ 2020年:11,227人(約7.9%減)
山ノ内町は高千穂町と同じ減少率。
志賀高原、湯田中渋温泉郷、地獄谷野猿公苑など観光資源は多い。けれど、人口は減っている。
高千穂町も、高千穂峡や天岩戸神社といった観光資源があるのに、やはり減っている。
ここで分かるのは「観光地だから人口が減らない」という保証はない、ということ。
一方で、田上町は少しだけ減少が緩やか。
新潟市方面への通勤がしやすい平野部にあることが、影響しているのかもしれない。
高千穂町も延岡とつながっているけれど、田上町に比べると距離や山の勾配など、生活動線としての負担は大きい。そこに差があるように感じる。
数字では見えないものを想像する
高千穂の風景と暮らしの現実
高千穂という町を思い出すとき、私は風景が浮かぶ。
高千穂峡の断崖と静かな水音。
国見ヶ丘の朝の空気。
真名井の滝、高千穂神社の夜神楽。
どれも観光地としての強さを持っている。
生活の装置もしっかりある。
高千穂町国民健康保険病院や、高千穂町立図書館、道の駅高千穂など、住民にも観光客にも意味がある場所がいくつもある。
けれど、それでも人口は減っている。
これは、町ががんばっていないからではない。
周辺の町も、山ノ内町も同じように減っている。条件が重なれば、結果も似る。だから、私は責める気持ちは持っていない。
でも、こうも思う。
来る人と、住む人。そのあいだには、段差のようなものがあるのかもしれない。
観光が強い町でこそ、そのギャップははっきり見えてくる。
今の私の仮説と、これから知りたいこと
ここまで見てきた中で、私の今の仮説はこうなる。
・高千穂町の人口減少は全国平均より速い
・ただし、周辺市町村も同じようなペースで減っている
・人口が同じくらいの町(山ノ内町)でも、似た傾向が見られる
・観光がある=人口が維持される、という図式は成り立たない
・田上町のように、通勤圏として機能している町は少しだけ減少がゆるやか
そして、ここから先は「暮らし側」の細部をもっと知りたい。
若い家族が住み替えできる住宅はあるのか?
通年で安定した雇用はどれくらいあるのか?
延岡側に通勤・通学する人が、町内に住み続けられる仕組みはあるのか?
国道218号の流れと、町の中の日常の流れ。
この2つが交わっているのか、それともすれ違っているのか。
そこに、高千穂町のこれからを考えるヒントがあるような気がしている。
この記事を書きながら、あらためて「人が来る町」と「人が住み続ける町」は別物なんだと実感しました。高千穂は観光地としてとても魅力的だけど、人口の数字を見ると静かに削られていくような印象があるのも事実です。
私自身、西都市に住んでいて、高千穂の美しさは何度も体験しています。でも、通勤や生活のリアルさを考えると、観光とは違う視点でもっと語らないといけないと思いました。次は暮らし側の目線で書いてみたいです。